文化・芸術

2008年12月 2日 (火)

『ヴィルヘルム・ハンマースホイ展』@国立西洋美術館

Vilhelm_hammershoi__interieur_mit_r 上野。日曜日は朝から良い天気で気温も高め。目の覚めるような青い空と、鮮やかに色づいた銀杏の黄色のコントラストがとても美しい。NHKの新日曜美術館でたまたま知ったデンマークの画家、ヴィルヘルム・ハンマースホイの回顧展にでかけた。今からちょうど100年前に活動したデンマークの作家。自宅の室内を描いた作品が多く、うす暗い室内に柔らかく差し込む窓の光といったモチーフを多く描いている。妻イーダがよく登場するのだが、そのほとんどが後ろ姿、しかもうなじを見せた姿というのがおもしろい。

住んでいたコペンハーゲンの建物や風景も描いているのだが、どれも殺風景で、静かさが漂っている。まるで徹夜明けに日が昇りきっていない朝、車の走ってない都心の道を自転車で走り抜けるような感じ。デンマークという土地の光のせいなのか、どの絵も色彩が穏やかで、空の色や、壁の色、建物の壁の色も中間色が多く、主張しすぎないところがとてもいい。どこか侘びしさのようなものを感じさせ、日本の空にもにているようにも思えるし、余分を取り除いた無印良品的価値観は、日本人好みな気がする。こんな絵なら自分の部屋に飾りたいと思えた。

展覧会の最後には、もはや人物さえ省かれた室内の絵が並ぶ。何もない室内に、ただドアが中途半端に開け放たれている絵。壁沿いに置かれたソファにただまぶしい陽光が差し込んでいる絵。何が起こっているわけでないのだが、その部屋に満ちている空気は、私はたしかに知っている、いつか感じたことのある空気である気がした。

大学最後の年に一年だけ住んでいたおんぼろアパート。そこは家賃15,000円という格安の物件で、相当年季の入った建物なのだが日当たりが良く、静かな住宅地にあったため、周りの音がまったくなく、しかも9畳の広さがあって、物はないけどえらく居心地の良い空間だった。授業にもほとんどでなくなって、その部屋で日がな一日、昼寝したり、本を読んだり、通っていた講座の課題をしたりする毎日。いつも部屋にいるときは何かしら音楽をかけていたのだけど、読書に集中しているときなど、CDが終わってもそのままにしながら本に向かっていた。何もないけど濃密な時間。静寂の中に、豊かさを感じるような時間。そんな記憶を思い出させるような感傷的な気分になってしまった。帰りには珍しく展覧会の図録も買ってしまった。しばらくトイレに置いておこうと思う。

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