ひたすら暗い『チェイサー』
韓国映画は数年に一度こうやって我々の魂を揺さぶってくるなあ。六本木シネマートにて。月曜日はメンズデーで1,000円ポッキリ。しかし館内はガラガラでした。監督・脚本は長編第一作のナ・ホンジン 。韓国で実際に起こった猟奇殺人事件を題材にしたサスペンス。見終わった後はどんよりとした気分にうちひしがれて、ぐったりと疲れてしまった。物語はとてもシンプル。だけどぐいぐい引き込まれて見てしまいました。演出が巧みだからだろうか。ソウルの深夜の住宅地。真っ暗な闇の中を男たちが転びながら走って、飛びかかって、殴る、蹴るの連続。闇の中に荒々しく浮かぶ男たちの表情が印象的で、登場人物は常に何かにいらだち、急かされるような緊迫感があふれていてハラハラしっぱなしでした。
坂の多い町の路地を走って追いかけるシーンや、考えるより先に平手打ちが出るような主人公など、全体的にとても「肉体的」シーンが多くて、ハンマーを振り回す殺人シーンなんかもとても肉体的な痛みに訴えるような演出が多く、じっとしていられないような、そわそわした感じで観ていました。物語の真ん中あたりから一人の少女が主人公と絡みはじめるのですが、そのキャラクターというのがこの映画の中でも唯一の口直しのような存在で、主人公も俗っぽさや怒りなどなどから救われようとするようにも見えたところがおもしろかった。とりわけその分、悲惨な部分が際だつような印象でした。
犯人の犯行の動機などがあまり深く描かれないのですが、物語のメインをその謎の解明に置くよりも、もっとシンプルに男たちの追いかけっこや対決といったアクションにポイントにしているところが良かった。あるひとつの解釈でこの犯罪をまとめてしまうより、観客の想像にゆだねてしまう方がなんだか恐怖はつのるしなあ。そんな犯人の深い心の闇を、夜の路地の暗さがよく表しているように思えました。
DVDにて。ゴールデンウィークは映画業界が決めた名前だったはず。と思いながら借りたDVDのうちの一本。ドイツ・オーストリア共同制作の映画。去年のアカデミー外国語映画賞受賞。第二次大戦中に英米の経済の混乱を狙ったドイツ軍による贋札製作作戦「ベルンハルト作戦」を描いた物語。実話に基づいていることの注記がないのは、ドイツ国内ではこの事件は常識だったからだろうか。主人公はパスポートの偽造で逮捕されたユダヤ人の男サリー。強制収容所に移送されるのだが、送られた先は印刷やグラフィック、製紙などのプロフェッショナルたちが集められた通貨偽造班だった…。
六本木にて。ダニー・ボイル監督。出演者は全員インド人。もちろん一人も名前を知らない。おもしろかった。物語、キャラクター、舞台、演出が一体となって、ひとつのうねりのようなものを作り出していた。それはインドという国の勢い、というよりアジアの新興国すべてに当てはまるんだろうけど、その土地全体からあふれ出るエネルギーのようのなものが詰まっている映画でした。子供のころ見たら人生観に影響を与えそうな気がする。
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